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不肖「信頼出来ない語り手」明智紫苑の我楽多ブログです。主にエッセイを投稿しますが、たまには小説や自作キャラクタードールの紹介記事なども載せます。《Copyright ©Shion Akechi / Akechi Shion》 ㊟当サイトに掲載している小説、エッセイ、画像などの無断転載を禁止します。

「男の七光り」に頼れない/頼らない世界

 俗に「涙は女の武器」という言葉があるが、それはまさしく、典型的な「ただし美人に限る」事態だ。それはさておき、あるサイトに、このような記事があった。

 このサイトの管理人さん曰く、女性にとっての最強の武器は自分自身の涙ではなく、自分と親しい関係にある「男性」の存在だというのだ。いつぞやのツイッターで、フェミニストを自称している別の女性が「男は他の男と競うために、女を自分の『ポケモン』にしている」と発言していたが、それはむしろ、女性の異性愛者にこそ言えるのだ。男性の異性愛者の場合は、女性を単なるお飾りとしての「トロフィーワイフ」にするのが典型例であり、「ポケモン」に例えられるような「武器」や「防具」としての機能を女性に対して求めないだろう。ポケモンというよりもむしろ、ドラクエホイミスライム(=癒やしの機能)だろう。


 さて、ここで「トロフィーワイフ」という単語を持ち出したが、私が思うに、フィクションの中には「トロフィーヒロイン」とでも言うべき女性キャラクターが少なくない。それは、男性キャラクターが、特に主人公が「異性愛男性」である事を証明するための存在であり、さらには男性ヒーローの七光りによって「ヒロイン」の立場を得ている人たちだ。現代日本の「教養」の一つである『ドラえもん』におけるしずかちゃんが「トロフィーヒロイン」の代表格である。そのしずかちゃんの男性版である『セーラームーン』のタキシード仮面は、まさしく「トロフィーヒーロー」だ。

 最近流行っているゲームアプリ並びに一連のメディアミックス作品である『ウマ娘』は、ヒロインたち(すなわちウマ娘たち、並びに女性トレーナー)が「男の七光り」に頼る事が出来ない世界観の作品である。少なくとも、ウマ娘たちは誰かの「トロフィーワイフ」になるよりはむしろ、自分自身の実力と実績によって「トロフィーハズバンド」を得られる可能性がある女性たちだ。「かわいい女の子である」「のび太異性愛相手である」というだけで「ヒロイン」扱いされている上に、仮に男の子であれば「のび太以上、出木杉君未満」の中途半端な子に過ぎないしずかちゃん(映画版での活躍はさておき)とは対照的な女性たちだろう。
 我が最愛の漫画『ファイブスター物語』(以下、FSS)の作者である永野護氏は昔、単行本1巻の後書きで「男にとって都合のいい女性キャラクター(を描く、登場させるの)だけは避けたい」と書いている。私は当時、それは女性キャラクターの描写をかなり困難にする姿勢ではないかと思ったが、実際には逆だった。「女性である」というだけで「特権性」を持つような女性キャラクターを描くのは、かえって創作活動の限界を作るのだ。その証拠に、FSSの多種多様な女性たちは、実にパワフルで魅力的だ。そう、後のウマ娘たちのように。
 男性との関係性を度外視する事によって、創作活動上での女性キャラクターの描写の可能性は広がるだろう。 異性愛主義 ヘテロセクシズム に基づいて女性キャラクターを造形するのは、特に男性クリエイターの場合は、ヒロインが単なる「男にとって都合の良い女」に成り下がる危険性がある。そして、そのヒロインと敵対する他の女性キャラクターは陳腐な「悪女」に成り下がるだろう。私が山田風太郎氏の一部作品を読んで「モヤッとした」のは、あまりにも分かりやす過ぎる「聖女VS魔女」の図式が二人の女性キャラクターの対比として描かれていた点だ。

 私が宮城谷昌光氏の小説のヒロインたちに対して苦手意識を抱くのは、古い世代の男性作家らしい女性観に対する反発である。宮城谷氏が描く男性ヒーローたちは基本的にかっこいいが、それでもあまりにも 優等生的 いいこちゃん 過ぎるのが鼻につく。ましてや、その「 優等生 いいこちゃん 」の伴侶が陳腐な「聖女」かつ「トロフィーヒロイン」となると、個人的にはゲンナリする。FSSの多彩かつ「自分自身のためにこそ生きている」女性キャラクターたちをこよなく愛する私にとっては、宮城谷作品群の女性観はほとんど親の仇に等しいものなのだ(大袈裟)。
 さて、話を『ウマ娘』に戻すが、『ウマ娘』では「女が男を自分の 使い魔 ポケモン にして他の女と戦う」価値観はほぼない。そう、「男性」を自分の「武器」にする(他力本願で生きていく)世界観ではない。一部のフェミニストが「女性を馬に見立てるのは女性蔑視だ」と非難しているという話をどこかのウェブサイト記事で読んだ記憶があるが、ある人はそれに対して「あれが女性蔑視ならば、日本刀を美男子として擬人化している『刀剣乱舞』は男性蔑視だろう」とツッコミを入れていた。実際にゲーム『ウマ娘』をプレイしてみると、女性たちが他力本願的な「武器」としての「トロフィーヒーロー」に頼らずに努力して生きていくという、実にフェミニズム的な世界観だと私は思う。


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